数学の用語 2
区間と数直線
実数 $a$ と $b$ を用いて定義される区間とは,下の表のように含まれる範囲を明示して,例えば,閉区間 $[a,b]$ とは実数全体 $\mathbb{R}$ の部分集合で,$a\leq x\leq b$ を満たす$\mathbb{R}$ の元 $x$ 全体の集合という意味で $[a,b]=\{x\in \mathbb{R}\mid a\leq x\leq b\}$ のように定義されるものです。端点の $a$,$b$ を含むのか,あるいは含まないぎりぎりなのかで呼び方が異なります。このように区間が定義できるのは,実数全体 $\mathbb{R}$ が大小関係($\leq$)を順序とする全順序集合になっているからです。
数直線とは,原点 $O$ と単位点 $E$ を定めて,直線上の各点に順序を保持した状態で実数を一対一対応させたもの,すなわち全単射(対応が一対一で,すべての元に対応がある)の関係にあるものです。全単射の関係があるので,見た目は違いますが私たちは数直線が実数を表しているとみなすことができます。実数 $a$ と $b$ を用いて定義される区間は,数直線上で $a$ と $b$ の間に位置する点(つまりそれに対応する実数)全体を塗りつぶすことで,視覚的に示すことができます。閉区間か開区間かを区別するために端点を●や○で表示するなどして区別します。端点が存在せず無限 $\infty$ である場合は $(-\infty, b)$ と書いて $b$ を右端点とする無限開区間のような言い方をします。$(-\infty, \infty)$ は $\mathbb{R}$ と同一視できます。
名称 | 表記 | 含まれる範囲 | |
---|---|---|---|
閉区間 | $[a,b]$ | $a\leq x\leq b$ | 両端 $a$,$b$ を含む |
開区間 | $(a,b)$ | $a < x < b$ | 両端は含まない |
右半開区間 | $[a,b)$ | $a\leq x < b$ | $a$ は含むが $b$ は含まない |
左半開区間 | $(a,b]$ | $a < x \leq b$ | $a$ は含まず $b$ は含む |
座標
数直線の自然な拡張として,平面上の各点に実数の組 $(a,b)$ を対応させることができます。ここで $(a,b)$ は,順番が異なれば(たとえ $a=b$ であっても)$(a,b)\neq(b,a)$ で別のものとみなす順番が重要な順序対と呼ばれるものです。このときの各実数を座標といいます。$a$ を横方向($x$ 座標),$b$ を縦方向($y$ 座標)の数直線に対応させると,平面上の各点と実数の組からなる順序対全体との間には全単射が定まります。この順序対全体の集合を $\mathbb{R}^2$ と表し,二次元のユークリッド空間,つまり平面と同一視します。同様の考え方で,三つの実数の組 $(a,b,c)$ を対応させた $\mathbb{R}^3$(三次元空間),さらに一般の $n$ 個の実数の組からなる $\mathbb{R}^n\ (n\in\mathbb{N})$ も考えられます。
ベクトル
平面や空間上の点を,位置としてだけでなく,向きと大きさをもった量と見なすことがあります。このような量をベクトルと呼びます。たとえば,原点 $(0,0)$ から点 $(x,y)$ へ向かう矢印を考えると,この矢印はベクトル $\bm{v} = (x,y)$ と表されます。ベクトルは $\bm{v}$ のように太字の記号で表すことが多いですが,$\vec{v}$ のように上に矢印を書く方法もあります。
ベクトルは加法とスカラー倍という二つの演算ができます。たとえば,$\bm{a} = (x_1,y_1)$,$\bm{b} = (x_2,y_2)$ のとき,ベクトルの加法は $\bm{a} + \bm{b} = (x_1 + x_2,\, y_1 + y_2)$,スカラー(実数)$t$ を使ったスカラー倍は $t\bm{a} = (tx_1, ty_1)$ のように定義されます。
線分
$\mathbb{R}^2$ 上の二点 $A=(x_1,y_1)$ と $B=(x_2,y_2)$ を結ぶ直線(あるいはこれを $\mathbb{R}^n$ に拡張したもの)のうち,両端 $A$ と $B$ を含めた「間の部分」だけを取り出したものを線分と言います。ベクトルを使って表すと,線分は $0 \leq t \leq 1$ を満たす実数 $t$ に対して,$(1 - t)\bm{A} + t\bm{B}$ で動く点全体の集合と定義されます。この表現は,ベクトル $\bm{A}$ から $\bm{B}$ に向かって直線上を動く点をパラメータ $t$ で表しており,$t=0$ のとき $\bm{A}$,$t=1$ のとき $\bm{B}$ に対応します。中間の値 $0 < t < 1$ は,線分上の中間の点を表します。
領域
関数が二つ以上の変数に依存する場合,定義域は単なる区間ではなく,平面 $\mathbb{R}^2$ や空間 $\mathbb{R}^3$ の部分集合である領域として捉えられます。領域は,数直線上の区間を拡張したものと見ることができます。
例えば,二変数関数 $f(x, y)$ を考えるとき,その定義域は $\mathbb{R}^2$ の部分集合である領域 $D$ となり,この $D$ の中の点 $(x, y)$ に対して関数が定義されます。具体的には,$D = \{(x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid x^2 + y^2 < 1\}$ のようにして,「単位円盤の内部」を領域として定義できます。円周上の点も含める場合は,$x^2 + y^2 \leq 1$ とします。
領域には,その形や性質によっていくつかの種類があります。特に重要なのが「内部だけからなる領域」と「境界も含む領域」の違いです。これらは開集合と閉集合という概念で区別されます。開集合により定義される開領域とは,その中にあるすべての点について,その点を中心に,ごく小さな円を描いたときに,その円全体が領域の中にすっぽり入るような領域のことです。「小さな円がすっぽり入る」という性質をもつ集合が開集合の特徴です。つまり,端のギリギリの点は含まず,どの点も「中にある」といえるような領域です。反対に,閉領域(閉集合)は,その境目の点(端の点)も含めて領域に入っている場合を指します。たとえば,$x^2 + y^2 \leq 1$ で表される単位円盤は,円の中身だけでなく,円周上の点も含むので閉領域です。これに対して,$x^2 + y^2 < 1$ のように円周上の点を含まない場合は開領域になります。単に「領域」といったときは,特に断らない限り開領域を指すのが一般的です。
また,領域 $D$ が,互いに交わらない(共通部分が空集合の)二つの開集合に分けられないとき,$D$ は連結であるといいます。特に,$D$ が開領域でもある場合,これを連結領域と呼びます。
連続
関数が連続であるというのは,直観的にはグラフが途切れたり飛び跳ねたりしていないというものですが,数学的には,区間 $I$ で定義された関数 $f(x)$ が点 $a\in I$ において連続であるとは,次の条件が成り立つことをいいます。
つまり,$f(a)$ がきちんと存在して,$x\rightarrow a$ としたときの $f(x)$ の極限値が存在して,その極限値が $f(a)$ であるとき,$f(x)$ は点 $a$ において連続ということになります。このとき $x$ は $a$ に正負左右両方から接近して,同じ極限値 $f(a)$ になる必要があります。ただし $a$ が区間の端点である場合,$x \rightarrow a$ の極限は定義される側(左または右)からの極限で判断します。