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pHの影響

水溶液中の反応では,しばしば酸化還元(電子の移動)とプロトンの移動が同時に起こります。本節では水素イオン濃度 $\pH$ が還元電位に与える影響について考察します。プロトン移動を伴う還元反応の一般式とネルンストの式は次のように書くことができます。関わる電子数を $\nue$,プロトン数を $\nup$ で表しています。一般式で書いたので $\ce{Red\,H_{\nup}}$ という表記が複雑に見えるかもしれませんが,要は $\ce{Ox}$ が還元される際に $\nup$ 個のプロトンの移動が起こったということを言っているだけです。よって $a_\ce{Red\,H_{\nup}}$ も $a$ 以外は全部添え字ですので難しく考えないでください。

\begin{align} &\ce{Ox} + \nue \ce{e-} + \nup \ce{H+} \rightleftarrows \ce{Red\,H_{\nup}}\\[10pt] &E = \Eo - \frac{RT}{\nue F}\,\ln \frac{a_\ce{Red\,H_{\nup}}}{a_\ce{Ox}\,a_\ce{H+}^{\nup}} = \Eo - \frac{RT}{\nue F}\,\ln \frac{a_\ce{Red\,H_{\nup}}}{a_\ce{Ox}} + \frac{\nup RT}{\nue F}\ln a_\ce{H+} \label{EpH} \end{align}

今は還元電位の $\pH$ 依存性を知りたいので,$\pH$ が関係する部分だけを抜き出すために,式(\ref{EpH})の右辺第一項,第二項をまとめて$E'$で表記し,$\ln a_{\ce{H+}} = \ln 10\cdot\log a_{\ce{H+}}=-\ln 10\cdot\pH$ の関係を用いると,還元電位の $\pH$ 依存性は以下で表されます[1]

$$E = E' - \frac{\nup RT\ln 10}{\nue F}\pH \approx E' - \frac{0.0591\,\nup}{\nue}\pH \label{ephrelation}$$

この結果から $\pH$ が大きくなると還元電位は小さくなることが分かります。

過塩素酸の酸化力

過塩素酸 $\ce{ClO4-}$ は酸化剤としてはたらくことが知られており,自らは還元されて塩素酸 $\ce{ClO3-}$ になります。過塩素酸の酸化力が溶液の $\pH$ によってどのように変わるかを考えてみましょう。反応は以下の通りです。

$$\ce{ClO4-(aq) + 2e- + 2H+(aq) -> ClO3-(aq) + H2O(l)}$$

この反応は標準状態($\pH\,0$)で $\Eo = +1.189 \unit{V}$ です。$\pH\,7$ での還元電位は式(\ref{ephrelation})を用いると以下のように求まります。ここでは $\pH$ 以外は標準状態から変わらないと考えて $E' = \Eo$ とします。

$$E = +1.189 - \frac{0.0591 \times 2}{2}\times 7 = 0.775 \unit{V}$$

還元電位が小さくなるということは過塩素酸の還元反応が進みにくくなる,すなわち酸化剤としては弱くなるということですので,過塩素酸は酸性条件で強い酸化剤としてはたらくことが分かります。

最終更新日 2022/07/16