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対数の表記法

対数(logarithm)は高校の数学で習い,化学の学習でも頻繁に用いるのですが,その表記法に若干の混乱が見られますのでここで整理します。結論を先に述べますと本サイトでは一貫して以下の表記を採用します。

常用対数 $\log_{10} x$ は $\log x$ で表し,自然対数 $\log_e x$ は $\ln x$ で表す。

対数の定義

いわゆる現代数学的な定義ではなく,高校数学の範疇での対数の定義を確認しておきます。

$a^m=M$($a>0, a\neq 1$)のとき,指数 $m$ を「$a$ をとする $M$ の対数」といい,$m=\log_aM$ と書く。$M$ は真数と言う。

定義から分かるように対数には色々な底の場合を考えることができて,$\log$ の記号と底 $a$ を組み合わせて記述するのが正規の方法なのですが,よく使う底の対数では毎回底を書いていると面倒で見にくいため,専用の記号が用意されています。よく使うのは数学では微積分がしやすいことからネイピア数 $e$ を底とする自然対数(natural logarithm),物理・化学を含む自然科学系では自然対数に加え,実験的な扱いに便利な底を 10 とする常用対数(common logarithm)が頻繁に用いられます。また情報の世界では 2 進数に対応した底 2 の対数が使われるようです。

常用対数

底が 10 の対数です。$\pH$ の定義にも使われますので高校化学の範囲でも頻繁に用いられます。データをグラフ化するときに,データの数値の範囲が桁違いに広い場合は対数軸でプロットした方がデータの特徴が見やすくなることがあり,片対数あるいは両対数のグラフ用紙にプロットしますが,これは常用対数軸です[1]

よく使われるので底を略した書き方が用意されており,以下はすべて $\log_{10}x$ のことを意味します。

$$\log_{10}x \qquad \log x \qquad \mathrm{Log}\,x \qquad \lg x \nonumber$$

自然対数

底がネイピア数 $e$ の対数です。高校化学の範囲では使いませんが,大学レベルの化学の学習には頻繁に用いられます。こちらも常用対数と同様によく使われるので底を略した書き方が用意されており,以下はすべて $\log_{e}x$ のことを意味します。

$$\log_{e}x \qquad \ln x \qquad \log x \nonumber$$

表記の混乱と見分け方

上の常用対数と自然対数の表記法を比べると $\log x$ が重複していることが分かります。つまり $\log x$ とぽつんと書かれていた場合,それは常用対数なのかもしれませんし,自然対数なのかもしれないという困った状況が生じます。だったらこの表記は使うのをやめて別の重複していない表記を使えばよいと思うかもしれませんが,いかんせん $\log$ はいちばん使いやすい表記ですし,各学術分野での習慣みたいなものもあって,今更急には変えられないというのが実情です。また,$\lg x$ は底 2 の対数を表す記号として使われることもあります。

いくつか具体例を見てみると,Excel では対数を求める LOG 関数が用意されていて,底の指定を省略すると 10 とみなされます($\log x$ は常用対数とする文化)。Excel で自然対数を求めたければ別に用意されている LN 関数を使います。一方,MATLAB という数式処理ソフトでは log 関数は自然対数を与え,常用対数が欲しければ log10 という別に用意されている関数を使います($\log x$ は自然対数とする文化)。Mathematica で使う Wolfram 言語でも底を指定しない Log は自然対数を表します。一方,関数電卓では log ボタンが常用対数,ln ボタンが自然対数とされていると思います。

このように $\log x$ が常用対数と自然対数のどちらを表すのかは状況次第というところがありますが,化学の教科書に限って言うと,常用対数を $\log x$,自然対数を $\ln x$ で表すものが多いように思いますので,本サイトでもこの表記を踏襲することにします。教科書や文献を見ていて $\log x$ の表記が登場した場合,これが常用対数なのか自然対数なのかは一応,次のように見分けることが可能です。

  1. $\ln x$ の表記が同一文献内に見つかれば,そちらが自然対数なので $\log x$ は常用対数。
  2. 微分積分の際に $2.303$ のような底 10 から $e$ に変換する係数 $\log_e10$ が出てきたら,それは常用対数。
  3. 数学寄りの文献の場合は $\log x$ が自然対数なのではないかと疑ってみる。
  4. それでも判断がつかないときは文脈から察するしかない。