コークス

こーくす

coke

高校の化学では,鉄の製錬に関係して「鉄鉱石とコークス $\ce{C}$,石灰石 $\ce{CaCO3}$ を溶鉱炉に入れる」と習うので,コークスという言葉は聞いたことがあり,$\ce{C}$ と書いてあるので炭素なんだなということも知っている方が多いと思います。一方「炭素ならば黒鉛と何が違うのか」とか「コークス,黒鉛,ダイヤモンドは同素体?」という疑問も当然出るわけで,コークス $\ce{C}$ という表記は少々誤解を招きやすい気もします。

コークスは化学の分類でいうと,単体ではなく,混合物なので,黒鉛やダイヤモンドと同素体(allotrope)ではありません。教科書のコークス $\ce{C}$ という表記は主成分の元素が炭素であって,鉄の製錬ではコークスに含まれる炭素の還元作用を利用しているという意味です。発熱量が多いこともコークスの特徴で,コークスを加え続けることで溶鉱炉は熱々に保たれます。机上の話であればコークスの代わりに黒鉛を使って製錬しても良いのかもしれませんが,経済的に成り立ちません。

石油からつくる石油コークスというものもありますが,多くのコークスは石炭(coal)から作られます。石炭は地中に埋もれた植物が長い時間をかけて天然の炭化作用を受けて変質してできたものです。変質の過程で揮発化しやすい成分が抜けて,(グレードによって率はさまざまですが)炭素含有率が高くなります。しかし,まだまだ炭素以外の成分も多く含まれていますので,石炭を高温乾留($1000\oC$ くらいで蒸し焼き)することで,複数の成分に分解,分離することができます。最終的に気体として集められる成分がコークス炉ガス,気体として出てきたものを冷やして液状化したものがコールタール,灰などを除いた残りの固体がコークスです。コークスは原料の石炭よりも炭素含有率が高くなっていますが,純粋な炭素ではないので単体ではなく,黒鉛とコークスは同素体ではありません。

炭素含有率が高くて良い石炭(無煙炭)は,黒いダイヤモンドと言われるくらい表面がテカテカと黒光りしています。一方,コークスは製造過程で多孔質になるため,炭素含有率が高くても,光をあまり反射しないくすんだ見た目になります。

コークス
(Apphim, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

コークスは英語で coke ですが,コークスの写真を見たい方は「コークス」と日本語で画像検索してください。英語の coke で検索すると,強力なライバルがいるためコークスを見ることはかないません。

最終更新日 2023/02/12

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