黄銅鉱
おうどうこう
chalcopyrite
黄銅鉱は正方晶系の $\ce{CuFeS2}$ を含む鉱物で,主要な銅鉱石として知られています。下の写真に示すように黄色味を帯びた金属光沢を有する鉱物ですので,欲深い人々がこれを金と勘違いして(騙されて)痛い目にあっています。見た目が金に似ていて騙されやすい鉱物は,愚か者の金(fool's gold)という不名誉な別名で呼ばれることがあって,黄鉄鉱($\ce{FeS2}$)などはその代表例ですが,黄銅鉱も愚か者の金のひとつです。ハンマーで叩くと黄銅鉱は砕けるのに対し,金はやわらかいため砕けずにつぶれるので見分けがつくそうですので,あやしいと思ったら叩いてみれば騙されずに済みます。黄銅鉱は時間が経つと写真で示すように光沢を失いますので,残念ながら金のように永遠の輝きは放ってくれません。しかし,実際のところは,黄銅鉱には金,銀,ニッケルなどが不純物として含まれますので,技術があれば金を得ることもできますし,黄銅鉱から製錬される銅は重要な工業品です。そう考えると,黄銅鉱を無価値と決めつけ,無下に扱う者こそ,愚か者なのかもしれません。化合物としての $\ce{CuFeS2}$ は二硫化鉄銅(copper iron disulfide)とよばれます。
銅の製錬
黄銅鉱を溶鉱炉で加熱してケイ砂と反応させると,上部がメタケイ酸鉄 $\ce{FeSiO3}$,下部が硫化銅(I) $\ce{Cu2S}$ の二層に分かれます。下層の硫化銅(I)をとりだして転炉に移し,空気を吹き込むと,硫黄が酸化されて銅が得られます。この銅は粗銅とよばれ,教科書的には,これを電解製錬すると純度が $99.99\unit{\%}$ 以上の純銅となります。工業的には,電解製錬の前にもう少し純度を高めるプロセスが入る場合があるようです。
製錬に用いられる非鉄金属硫化物には,銅のほかにも亜鉛,鉛,ニッケルなどの硫化物があり,工業原料としては日本はほぼすべてを輸入に頼っています。上の説明にもあるように,硫化物を空気酸化して金属を取り出しますので,製錬によって大量の二酸化硫黄 $\ce{SO2}$ が発生します。せっかく輸入した硫黄を捨ててはもったいないので,これは回収され硫酸製造に用いられます。よって黄銅鉱は銅の原料であると同時に,硫酸の原料でもあるといえます。
最終更新日 2023/03/12