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ppm

パーセント(百分率)は全体を $100$ としたときに,そのうち着目しているものがいくつであるのかという割合(比)を表しています。例えば,食塩水が $100\unit{g}$ あったとして,そのうち食塩が $1\unit{g}$,水が $99\unit{g}$ であれば,その食塩水に含まれる食塩の質量パーセント濃度は $1\unit{\%}$ です。全体を $100$ とするので,食塩 $1\unit{g}$ と水 $100\unit{g}$ ではありません。

ppm は parts per million の略で,日本語では百万分率です。すなわち全体を百万($= 10^6$)としたときに,そのうち着目しているものがいくつであるのかという比が ppm の数値です。水 $10^6\unit{g} = 1000\unit{kg} = 1\unit{t}$ に食塩が $1\unit{g}$ 溶けていれば $1\unit{ppm}$ となります。もちろん正確にはこの場合の水は $1000000 - 1 = 999999\unit{g}$ でなくてはいけませんが,$1/1000001 = 9.99999\times 10^{-7} = 0.999999\unit{ppm}$ と $1/1000000 = 1\times 10^{-6} = 1\unit{ppm}$ の違いですのであまり気にする必要はないでしょう。これがパーセントだと,$0.99\unit{\%}$ と $1\unit{\%}$ で差が $0.01\unit{\%}$ となりますので,状況によっては気にしなくてはいけない数字になります(ここでは有効数字を無視した書き方をしています)。

イメージがわかないという方のために,幅 $12\unit{m}$,深さ $1\unit{m}$ の $25\unit{m}$ プール(小学校のプールが大体こんな感じ)に $0.3\unit{kg}=300\unit{g}$ の食塩を入れると $1\unit{ppm}$ という例えはどうでしょう。スーパーで $500\unit{g}$ 入りの食塩の袋が売られていますので,プールに塩一袋が ppm のイメージです。

パーセントも ppm も比ですので,何の比であるのかによって値が変わってきます。上述のようにパーセントでは質量パーセントが $1\unit{\%}$ といったように,質量比(あるいは体積比)を比べているというのが分かる表記にすることが多いですが,ppm では「質量 ppm」のような表記はあまり見ません。対象が固体,液体であれば質量比とするのが一般的ですが,気体の場合は体積比で表すことが多いようです。

コロナ禍で室内の換気の状況を数値化して表すために二酸化炭素の濃度が注目されました。人間は呼吸により二酸化炭素を吐き出しますので,換気が悪ければ室内の二酸化炭素濃度が上昇するという理屈です。簡易なものから本格的なものまでいろいろな濃度測定器が売られていますが,濃度を ppm で表示するものが一般的です。この場合の ppm は体積比を意味しているものと思われます。

下図は気象庁のウェブサイトに掲載されていた図の引用で,三つの観測点における二酸化炭素濃度の経年変化を ppm 単位で示しています。このサイトでは「ppm は大気中の分子 100 万個中にある対象物質の個数を表す単位です」と説明されており,これはかなり厳密で正しい定義です。大気が理想気体として振る舞うならば,この定義で決めた値と体積比で決めた値は一致します。実在気体では,同温同圧同体積に含まれる分子数は物質によって異なるため,個数で定義した ppm と体積で定義した ppm の値は厳密には一致しません。このグラフが実際に分子の個数の比(物質量比と考えても同じです)で表されているのか,体積比に対して便宜上このような説明を与えているのかはこのサイトの情報からは判断できませんでした。

気象庁の観測点における二酸化炭素濃度及び年増加量の経年変化

気象庁の観測点における二酸化炭素濃度及び年増加量の経年変化
https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/ghgp/co2_trend.html

代替の単位

ppm は水中の微量成分を表す場合にも用いられますが,水の密度を $1\unit{g/mL}$ とするのであれば,$1\unit{ppm}$ は $1\unit{mg/L}$ に等しくなります。ppm は同じ物理量(次元)どうしの比であるため無次元となって物理単位ではありませんが,$\mathrm{mg/L}$ は濃度を表す物理単位です。

ppb と ppt

ppm とよく似た比を表す方法として,parts per billion(十億分率,$1/10^9$)の ppb,そして parts per trillion(一兆分率,$1/10^{12}$)の ppt があります。ppm よりもさらに少ない成分を表すのに便利で,上述のプールの例えを使うならば $0.3\unit{g}$ の食塩で $1\unit{ppb}$,$0.3\unit{mg}$ の食塩で $1\unit{ppt}$となります。料理の「お塩少々」が $0.5\unit{g}$ くらいらしいので,プールにお塩少々が ppb のイメージです。誰かがプールでオシッコすると(略)。

ただし,厄介なことに,billion を $10^{12}$,trillion を $10^{18}$ としている国があって,ppb と ppt は定義の国際的な統一がとれていません。日本国内で目にする ppb と ppt は十億分率と一兆分率と考えて良さそうですが,このような事情から ppb と ppt の使用は国際的には推奨されていません。$1\unit{ppm} = 1\unit{mg/L} = 1\unit{\mu g/mL}$ の方式に従うのであれば,$1\unit{ppb} = 1\unit{\mu g/L} = 1\unit{ng/mL}$,および $1\unit{ppt} = 1\unit{ng/L} = 1\unit{pg/mL}$ で表記した方が紛れがなさそうです。

参考

最終更新日 2022/07/23