PCR検査は増やすべきか

4月7日に出され,16日に対象を全国に拡大した新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言ですが,当初5月6日までと定められた期限は,残念ながら延長がほぼ確定的となり,まだまだ自粛を強いられる生活が続くようです。

新型コロナへの対応を巡っては,疾病そのものにどう立ち向かうのかといったことのほか,経済や生活の保障,教育の問題など,多角的な対策を講じなくてはならず,互いに利益が相反するような問題に対して,判断を示し続けなくてはならないわけですから,つくづく政治というのは難しい仕事だと感じます。

ウイルス感染しているかどうかを確かめる検査法として,PCR法がメディアでもよく紹介されていますが,PCRの検査数を増やすべきか否か,あるいは増やすにしてもどの程度増やすのかということについては,専門家の間でも意見が分かれているようです。

新型コロナが収束した後の話になりますが,感染がどのタイミングでどのように拡がり,そしてどのように収束していったのかという点については,今後,同じような事態,あるいはより強毒性のウイルスが登場した際の対策という意味でも,科学的な視点からしっかり検証する必要があります。その時,研究者としては,用いることができる感染状況データの規模が大きいほど,研究を進める上ではメリットとなるはずです。極論ですが,例えば国勢調査のように,ある特定のタイミングで,日本にいるすべての人のPCR検査を行うことができれば,その瞬間での日本国内の感染状況のスナップショットをとることができます。もし,これを1週間に1回とか,一定の間隔で連続して行うことができれば,研究データとしては非常に貴重なものとなるでしょう。もちろん,偽陰性の問題もありますし,統計学的には全数検査をしなくても結論を導くことはできますので,これはあくまで極論です。

現在の施策におけるPCR検査は,今この瞬間の命を救うことを目的としています。つまり,重症化の恐れが高い順に優先的に医療資源を割り当てる目的で,検査をしていると考えるべきでしょう。医療資源が無尽蔵であるならば,検査を増やすことで,感染者を隔離できるので,より早い収束も期待できるでしょうし,後の研究にも役立ちます。しかし,医療の現場が切迫している現状で,検査をむやみに増やすことは,未来の命を守る疫学調査目的としては望ましいと思いますが,いわゆる医療崩壊を引き起こしかねず,危険です。もし症状がなく陽性と判定されたとき,自分であれば,早期に適切な医療を受けたいと思ってしまいますし,家族間感染のリスクを考えると隔離してほしいと考えます。しかし,皆がそれをすると医療が崩壊するのは必至です。最近,個人で扱える検査キットも話題となっているようですが,医療現場に圧力を与えることになりかねないことと,にも関わらず,検査結果が疫学的調査の基礎データとして使いにくいという意味で,社会全体としてはデメリットがメリットを上回るのではないかと考えます。

検査数を増やしていくにしても,それは医療のキャパシティーと歩調を合わせながら行うことが大切です。そして,もし仮にPCR検査の資源に余裕があるのであれば(現状では余裕はないと思いますが),未来に向けて,統計的に有意となる規模の無作為抽出検査を定期的に行うことができれば,人類にとっての貴重なデータとなるでしょう。ただし,この場合はデータは統計的にのみ使用することとし,たとえ陽性であっても個人へは検査結果を通知しないといった割り切りをしないと,医療崩壊を助長する結果となってしまいます。つまり,検査目的の違いを明確にして,割り切った対応をする必要があると思います。

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